半導体業界で、英語はどれくらい必要なのか?
この質問に対する答えは、TOEIC○○点あればOKという単純なものではありません。職種、年齢、キャリアによって、必要な英語レベルは全く違います。
英語ができないと詰むのか?逆に、英語ができれば年収は上がるのか?
この記事では半導体業界で15年働き、TOEIC380点から760点まで上げ、現在米国で駐在している私の実体験をもとに、職種別・年齢別に必要な英語レベルを解説します。
結論を先に言えば、英語ができなくても今すぐ詰むことはありません。ただし、このままだと差は広がります。
結論|半導体業界で必要な英語は人による
不要な人
国内設計・国内顧客のみを担当している人は英語がなくても今すぐ困ることはありません。
技術資料を日本語で読み、日本語で図面を描き、日本語で顧客対応する。このサイクルが回っている限り、英語は必須ではありません。
あった方がいい人
30代以降のキャリアを考えると、英語はあった方がいいレベルから必要レベルに変わります。
海外案件、プロジェクトマネジメント、海外駐在。これらのチャンスは英語ができる人に優先的に回ってきます。
年収で言えば英語ができる人とできない人で、30代後半以降に100万円〜300万円の差がつきます。
必須な人
装置立上げ(海外)、FAE、PM、海外駐在。これらの役割では英語は逃げ場がありません。
毎日英語で顧客対応、トラブル説明、進捗報告。英語ができないと仕事が回りません。
【職種別】必要な英語レベル
設計・メカ(国内)
必要度:低〜中(ただし将来差が出る)
TOEIC目安
- 今すぐ困らない:500〜600点
- 将来を考えるなら:650点以上
実務で使う場面
- 海外メーカーの技術資料(英語PDF)
- 海外製部品の仕様書
- メールでの簡単な問い合わせ(定型文)
会話はほぼ不要です。ただし、英語の技術資料を読めないと、調べられない設計者になります。
海外製の部品を使う時、英語の仕様書しかない。Google翻訳に頼りきりだと、細かいニュアンスを読み間違え、設計ミスにつながるリスクがあります。
国内設計だけなら英語は必須ではない。ただし設計だけの人で終わる確率は高い。
30代後半で海外案件から声がかからなくなる。これが英語を避け続けた人の現実です。
装置立上げ(海外)
必要度:高(逃げられない)
TOEIC目安
- 最低ライン:650点
- 実務が回る:700〜800点
- 快適ゾーン:800点以上
実務で使う場面
- 顧客との進捗説明(Daily MTG)
- トラブル時の原因説明
- 今日は何をした/明日何をするの説明
- クレーム対応(これが一番きつい)
完璧な英語は不要です。中学生英語+技術単語+度胸で十分。
ただし、英語ができない人ほど現場で黙ります。黙る=評価されません。
私自身、最初の海外出張で、顧客との会議で何も理解できず、営業に通訳してもらいながら進めました。恥ずかしくて、悔しくて、もう二度と海外案件には関わりたくないと思いました。
でも、その後自分が会議で英語で話さなければならない状況に追い込まれました。逃げ場がなかった。だから必死で勉強しました。
FAE・PM
必要度:必須(逃げ場なし)
TOEIC目安
- 最低:700点
- 評価される:800点前後
- 外資・欧米顧客:800〜900点
実務で使う場面
- 顧客折衝
- 要求仕様のすり合わせ
- 社内外調整
- トラブルの責任説明
FAEやPMは技術力だけでなく調整力が求められます。そして、調整の多くは英語で行われます。
TOEICより重要なのは、相手を納得させる説明力です。
文法が多少間違っていても相手に伝わればOK。でも、黙って何も説明しないのは最悪です。
【フェーズ別】英語が必要になる瞬間
若手(20代):今すぐは不要。でもやらないと後悔する
20代は、実務で困ることはほぼありません。
国内顧客対応、国内案件が中心。英語を使う場面は少ない。だから、英語は後回しでいいやと思いがちです。
でも、30代で差が出ます。
後悔ポイント
- あの時、英語を避けたから海外案件に行けなかった
- TOEIC受ける習慣がなかった
- 英語の勉強を始めるタイミングを逃した
20代のうちに英語に触れる癖だけでもつけておくべきです。TOEIC500点→600点に上げるだけでも、30代での選択肢が変わります。
30代:ここが分岐点
30代は英語ができる人とできない人で、キャリアが大きく分かれます。
英語できる人
- 海外案件、PM、駐在候補
- 年収+100〜300万円ゾーン
英語できない人
- 国内専業、現場固定
- 年収頭打ち
同じ30代でも5年後に大きな差がつきます。
私自身、30代前半でTOEIC380点しかありませんでした。でも、このままだとまずいと気づき、1年かけて760点まで上げました。
その結果、海外案件を任され、プロジェクトリーダーになり、最終的に海外駐在のチャンスを掴めました。もし英語を避け続けていたら今の立ち位置はなかったと確信しています。
関連記事:
半導体エンジニアの海外駐在は本当においしいのか?年収・待遇・リスクを実体験ベースで解説
海外案件担当:一気に必須
海外案件を担当すると、英語は一気に必須になります。
TOEIC目安:700点以上
必要スキル
- 相手の言っていることを理解
- 自分の状況を説明
- ミスを謝る・言い訳しない
文法ミスは評価を落としません。でも、説明できないことが評価を落とします。
顧客が「今、装置はどういう状態なのか?」と聞いてきた時、黙っていたら終わりです。完璧な英語でなくても、「Today, we checked the parameter. Tomorrow, we will adjust it」と説明できれば、評価されます。
TOEICはどこまで意味がある?
600点:最低限
読める:◯(遅い)
聞ける:△
話せる:×
技術資料を読むのに時間がかかる。会議では何を話しているかわからない。自分から話すのは無理。
これがTOEIC600点の実力です。最低限のラインですが実務では厳しい。
700〜800点:評価され始める
読める:◎
聞ける:◯
話せる:△〜◯
技術資料をスムーズに読める。会議で大筋は理解できる。簡単な説明なら自分からできる。
このレベルになると、社内で英語ができる人として認識されます。海外案件を任されるようになり、駐在候補にも入ります。
私のTOEIC760点はこのゾーンです。実務ではメールの返信、簡単な技術的会話はできます。会議では、ネイティブがゆっくり話してくれれば理解できますが、手加減なしの場合は半分くらいの理解です。
だから米国で働いていてもまだまだと感じます。
900点:希少
TOEIC900点は、かなり希少です。社内で英語が得意な人として重宝されます。
ただし、実務で詰まる人も多い。
理由
- 点数が高くても説明経験がない
- 読み書きはできるが会話が苦手
- 度胸がなく黙ってしまう
点数より重要な○○
答えは実務での説明経験と度胸です。
TOEIC600点でも毎日顧客と英語で話している人の方が、TOEIC900点だけど英語を使ったことがない人より実務では強い。
間違っても話す。黙らない。逃げない。この姿勢が、英語力以上に評価されます。
英語ができないと詰む人/詰まない人
詰む人
特徴
- 国内専業
- 装置操作だけ
- 英語から逃げ続けた
どうなる?
- 40代で海外案件から外される
- 若手のサポート役止まり
- 年収:700〜800万円で頭打ち
本人はまだ大丈夫と思っていることが多いです。でも、周りから見るとこの人は国内しかできないと認識されています。
30代で英語を避け続けた結果、40代で選択肢がなくなる。これが、英語から逃げ続けた人の現実です。
詰まない人
英語が完璧でなくてもOK
英語ができなくても、役割を変えられる人は詰みません。
生き残りルート
- 国内PM(英語不要だが、調整力が必要)
- 技術管理職(部下に英語ができる人がいればOK)
- 顧客対応のまとめ役(通訳を使いながら進める)
英語は武器ではなく、選択肢を増やす道具です。
英語ができないから終わりではありません。でも、英語ができると選択肢が増えます。海外案件、PM、駐在。これらのチャンスは英語ができる人に優先的に回ってきます。
関連記事:
海外駐在経験のある半導体エンジニアが転職市場で異常に強い理由
英語力を最短で伸ばした人の共通点
独学ではない
英語力を最短で伸ばした人は、独学だけに頼りません。
オンライン英会話(短期集中)
私自身、オンライン英会話を使いました。最初はネイティブキャンプでカランメソッドを受講。その後、ビズメイツでビジネス英会話を練習。ほぼ毎日続けました。
ただし、目的は話す練習だけです。文法や単語は別途勉強する必要があります。
TOEIC対策
TOEIC公式問題集を繰り返し解く。TOEIC用単語練習帳を暗記する。
最も効果があったのは公式問題集の繰り返し練習です。時間配分が身につき、本番で焦らなくなりました。
仕事で使った
英語力が最も伸びるのは、仕事で使わざるを得ない状況に追い込まれた時です。
具体例
- 海外MTGに同席
- メールを自分で書く
- トラブル説明を任される
私の場合、海外顧客との会議で通訳なしで話さなければならない状況になりました。逃げ場がなかった。だから、必死で勉強しました。
勉強だけでは英語は伸びません。使わざるを得ない環境に身を置くことが、最短ルートです。
環境を変えた
英語力を伸ばした人の共通点は環境を変えたことです。
環境の変え方
- 海外案件に手を挙げた
- 部署異動(海外顧客対応部門へ)
- 転職(海外案件が多い企業へ)
- 海外駐在を勝ち取った
環境が9割です。どれだけ勉強しても使う場がなければ伸びません。
逆に、英語を使わざるを得ない環境に身を置けば、嫌でも伸びます。
英語が必要なキャリアを狙うなら
英語力そのものよりも環境が重要
ここまで読んで、英語を勉強しなければと思った方もいるかもしれません。
でも、英語を勉強することよりも、英語を使うポジションに行けるかが重要です。
どれだけTOEICの点数を上げても、使う場がなければ意味がありません。逆に、TOEIC600点でも、毎日英語を使う環境にいれば一気に伸びます。
今の会社に海外案件が少ないなら?
今の会社に海外案件が少ない、または海外案件の枠が限られている場合、どれだけ英語を勉強しても、チャンスが回ってこない可能性があります。
選択肢
- 社内で海外案件に手を挙げる(あれば)
- 部署異動を申し出る
- 転職で環境を変える
評価される環境はどこ?
海外案件が多い会社
- 海外売上比率が高い企業
- 海外拠点が多い企業
- 海外駐在のチャンスが多い企業
駐在実績がある会社
- 駐在要件が明確
- サポート体制が整っている
- 駐在後のキャリアパスが見える
外資・日系グローバル
- 英語が日常的に使われる
- グローバル案件が豊富
- 年収も高い
英語力が「武器になるか」「宝の持ち腐れになるか」は、会社選び・環境選びで決まります。
今の会社に残るべきか、英語を評価してくれる環境に動くべきかは、この視点で一度整理する必要があります。
→ 関連記事:
半導体エンジニアは転職すべき?残るべき?年収・評価・市場価値で比較
あなたのキャリアが、より良い方向に進むことを願っています。


コメント